週末は最低一冊「お勉強」読書をするようにしている。今週末は割合と関係のありそうな内容だったのでこちらにもちょっとコメントを書こうと思う。
「クラウド化する世界」は、現在すでに身近になりはじめているクラウド…つまりインターネットコンピューティングにより、パラダイムが大きく変わっている様子を俯瞰的に描く。コンピュータ書籍というよりはビジネス分野の人たちに向けて書かれた印象。
本書では電気が発電所から供給されコンセントに差し込むだけで手に入れられるまでの業界を変遷と対比しながら、ハードウェアやアプリケーションなどのIT投資を各企業ごとに行う現状が、今後GoogleやSalesForceなどのサービスに切り替わっていくことを解説していく。もはや各企業ごとに「発電所」を用意する必要はないですよ…ITはあたりまえの(コモディティな)インフラになっていきますよという訳だ。
このあたりの認識は梅田望夫氏が「ウェブ進化論」などでGoogleなどに対して“あちら側”や“情報発電所”と表現していた形とシンクロする感じがする。元々「クラウド化する世界」著者のニコラス・カー氏は前著「ITにお金を使うのは、もうおやめなさい」でも似た主張をしていたが、現在のクラウド・コンピューティング隆盛で説得力が遥かに増した。
また、Googleなどクラウドにより高度なサービスを、企業に限らず個人でも、そして先進国に限らずどの国の人も、(そして極論すればテロリストですら!)同じように使えるようになり始め、よりグローバルな競争をもたらす『フラット化』を押し進めていく効果を否応無しに出していくポジティブ/ネガティブ両面について言及する。「フラット化する世界(上),(下)」や「ウィキノミクス」などで描かれてきた世界が、よりクラウドにより具体的になってきたということだろう。
本書「クラウド化する世界」は前述の「ウェブ進化論」、「フラット化する世界」、「ウィキノミクス」のIT面でのマッシュアップのような内容と感じた。極論すればそれらを既に読んでいれば、ほぼ「クラウド化する世界」の内容は網羅されていると思う。逆にそうした本をまだ読んでいない人、クラウドに関しての紹介をビジネスな人たちにプレゼン機会がある方はまとめ的に読んでおいていいと思う。この書籍はコンピュータ本というよりは、あくまでもビジネス本で、ビジネスマンがクラウドを理解するためのモノなので。
ちなみに、本書内では「クラウド」という単語はほぼ登場しない。「ワールドワイドコンピューター」という表現になっている。翻訳時にタイトルをそれっぽくするため「クラウド」を入れたのではないかと思う。原題は「The Big Switch」。
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