2009/01/02

読書: マキアヴェッリ語録

正月3が日はゆっくりと読書を楽しむことに決め込んだ。まず最初に読了したのが、塩野七生 著「マキアヴェッリ語録」。権謀術数で目的のためには手段を選ばない「マキャヴェリズム」のあの“マキアヴェッリ”。正月から何黒いモノを読んでいるんだ!と言われるかもしれない。

実際の内容を読むと、黒い内容…というよりは、極めて冷徹な、ある意味科学的な目でニンゲンや社会を分析し、それに対する対処を書いているという内容 。15〜16世紀の話なので、君主はこうあるべきとか、国はこうあるべきといった政治的な話なのだけど、君主を経営者や何らかのリーダー、国を企業や団体、そして戦争を企業間競争などに置き換えると現代でも十分すぎるほど真をついている。

歴史上の人物に学ぶ経営…なんていうのは、よくビジネス書や雑誌にあり、眉唾になる気もするけど、ことマキアヴェッリの“科学的視点”はそうした方向とは異なるものだと思う。例えば次に挙げる例などは、ビジネス分野でもありがちな話なのでは?

人は、心中に巣くう嫉妬心によって、賞めるよりもけなすほうを好むものである。

それゆえに新しいやり方や秩序を主張したり導入したりするのは、それをしようとする者にとって、未知の海や陸の探検と同じ暗いに危険をともなう「事業」になる。

企画関係の仕事では、ともすれば自社もしくは他社も含めた政治的な要素で物事がうまく運ばなかったり、ねじ曲げられたり…といった目によく遭遇してしまう。そうした件に対処するためにも、いろいろと考えなくてはいけない。ちなみに上記のような“嫉妬心”に対する方法としては、以下が挙げられている。

(前略)この嫉妬心をおさえこむには、方策は二つある。

第一は、それを行わなければ直面せざるを得ない困難な事態を人々に納得させることだ。誰しも難局を自覚すると、そこから脱出しようとして、自分一人の想いなど忘れ、脱出させてくれそうな人に進んで従うようになる。

第二の方策は、強圧的にしろ他のいかなる方法にしろ、嫉妬心をもつ人々が擁立しそうな人物を、滅ぼしてしまうことである。(後略)

上記第1の手法は、何か最近の経済危機をうまく利用(!)して自説の説得力を増す材料として使う…という形に応用可能だろうし、また第2の手法についても(規模の大小はあれ)社内改革などしようとする場合に、“守旧派”を結束させないという意味で考えうるオプション…もちろん“滅ぼす”などの物騒なことはしないでも、完全に外すよう手を回してもらうなどの話をあらかじめしておくのが得策ということだろうか。

僕はモノが良ければ、もしくは可能性など、どうしてもアーリーアダプター系というか、そういう視点でものを見がちなので、本書のようなアプローチの内容は非常に参考になる。実践するかどうかはともかく、いつも手元に置いて、内容を確認したくなる…「マキアヴェッリ語録」はそんな本だ。アマゾンでの書評を見たが、古典の内容にも関わらず多くのポジティブなレビューが寄せられていた。そのまま使うというより現代への応用を考えなくてはいけなのだろうが、一種のビジネス・ハック本として是非一読を勧める。